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円高とは、ドルで計った日本の輸出企業の製品価格が上がることである。
日本企業は、価格を上げて販売量が減ることを甘受するか、価格を抑えて利潤を減らすかしなければならない。
どちらにしても売上数量か利益かそれらの両方が減少する。
しかも、アメリカもヨーロッパも、金融危機による不況で、日本からの輸出が減少するなかで円高になる。
量当たりの利益が減って、量も減るのは、日本企業にとってなおさら痛い。
消費財での輸入シェアでは二○・五%になる。
世界の貿易額の中でアメリカのシェアが低くなっている一つの理由は、世界の貿易は部品など中間財の輸入が多いが、アメリカでは最終消費財の輸入が大きいからだ。
たとえば、全世界の東アジア(中国を除く)からの輸入の中で中国のシェアは急増しているが、最終消費財輸入でのシェアは低いままである。
中国は部品を輸入しているが、それを組み立てて最終製品になったものの行き先はアメリカである。
日本を中心とした東アジアは部品のネットワークをつくることにより貿易額を膨らましてきたが、最終的に組み立てた製品は、やはりアメリカに行っている。
アメリカの消費需要が減少すれば、日本とアジアの輸出も減少してしまう。
したがって、アメリカの輸入が減少すれば、中国の輸出も減少する。
日本は、中国に大量に輸出していると思っていたが、その多くは部品で、結局、最終的にはアメリカに輸出していた。
世界の最終需要のかなりの部分は、アメリカの消費者が担っている。
その消費が、住宅価格の上昇を前提に借金で賄ったものだったから、住宅価格の下落とともに縮小しなければならなくなっている。
日本は、なかでもアメリカの消費需要に依存している国である。
二○○六年の日本の輸出に占める国別、品目別のシェアを示したものである。
日本の総輸出に占めるアメリカのシェアは一三・○%で中国(香港・マカオを含む)のシェアとほぼ同じだが(二○○七年では中国がアメリカを上回った)、品目別に見ると大きな差がある。
乗用車ではアメリカのシェアが四六・二%であるのに対して、中国は二・二%にすぎない。
消費財でも、アメリカのシェア二八・八%に対して中国は二一・八%である。
資本財、部品、加工品では中国のシェアはアメリカより大きいが、これらの資本財で部品と加工品を組み立てて製品になったものはアメリカに輸出される。
BRIはブラジル、ロシア、インド。
加工品は、食品原材料、鉄、セメント、化学製品など。
全輸出に占めるシェアは、乗用車が13.9%、消費財が6.9%、資本財が22.4%、部品が31.0%、加工品が23.4%・一次産品、その他(金など一般的な分類に当てはまらないもの)のシェアは、それぞれ0.9%、1.6%と小さいので省略◎本図はアジア経済研究所の熊谷聡氏に作成していただいた。
アメリカが不調になれば、日本の中国への輸出も不調になる。
日本はこれまで、アメリカの豊かな消費者向けの製品を提供してきた。
製品の質を考慮しない輸出物価(財務省「貿易統計」)と質を考慮した輸出価格指数(日本銀行「企業物価指数」)との差を示したものである。
質を考慮しない物価とは、馬力や質が上昇してもいても自動車一台当たりの価格を物価の変化と考えることであり、質を考慮したとは物価が上がっても自動車の質が向上していればその上昇率を割り引いて考えるということである。
当然、前者の物価上昇率は高くなり、後者は低くなる。
この差は、輸出しているものの品質の向上分と考えられる。
この差を見ると、変動はあるが、大きくなっていることが分かる。
日本の輸出品が高付加価値製品に移動している。
輸出の主流は、レクサスなどの高級車、大型のSUV(多目的スポーツ車)、大型で画質の高いテレビなどである。
不況になれば、必需性の低いものから支出を削られる。
高性能の車から走るだけの車へ、きれいに映るテレビから映るだけのテレビへとシフトする。
低付加価値の製品への需要のシフトが起こって、日本の高付加価値製品はより大きな打撃を受ける。
日本の株式市場の花形は、これらの製品をつくっている輸出型の企業、国際優良株である。
株価は下落し、株価の下落が銀行の自己資本を段損し、貸し渋りが起こる可能性もある。
株価の下落は、さらに、企業の年金資産、持合い株式の価値を下落させて、利潤を圧縮する。
しかし、だからといって、どうすればよかったのだろうか。
日本の人口は減少し、一人当たりの所得もたいして増えない。
将来のことを考えれば、海外の市場に依存するしかない。
高い日本の賃金では安物をつくれないから高付加価値の商品に特化していた。
日本の企業は、海外に依存することなど様々な不安から、キャッシュを溜め込んでいた。
需要の激減に対してキャッシュが不況抵抗力をもたらす。
二○○七年までの外資ファンドが言っていたように、キャッシュを投資していたら大変なことになっていた。
内需を増やせといっても、いまさら無駄な公共事業でもない。
これしかない状況の中での戦略だったと言うしかない。
アメリカの消費需要縮小は、金融危機が終わっても続く。
アメリカの実質GDP成長率は、住宅バブルの最中でも、九○年代平均の三%のままで高まっていない。
日本の八○年代末のバブルの期間には、それまで三%だった実質成長率が五%に高まったのとは対照的である。
ということは、アメリカの実質成長率が、ここしばらく過大消費の調整のために低迷するだけではなく、長期的にも停滞するだろうということだ。
過大消費がなければ、アメリカの長期的な実質経済成長率は、三%ではなくて二・五%程度に低下するだろう。
さらに、投資銀行というビジネスの多くが消滅する。
証券化されたものを多くの人々が疑い、これまでのように安全有利な証券として購入してはくれないだろうからだ。
この産業が生み出していた付加価値も消滅する。
これまでアメリカは、先進国の実質成長率がせいぜい二%であるなかで、三%の成長率を維持してきた。
これが世界の供給力を吸収してきたとともに資本をも引きつけてきた。
成長率が高いのなら、実質金利も高く、そうであるならアメリカに投資することは正しいとなる。
しかし、アメリカの成長率が普通の先進国並みになるなら、実質金利が高いとは言えない。
今までのように、資本を内需型経済への転換と日本のインフレ率世界金融危機の直接の影響が小さい日本で、経済への影響が決して小さくはない大きな理由は、日本が外需に依存していることだった。
外需に依存しているのは内需が小さいからだ。
内需が小さいのは、日本人が支出をしないで貯蓄をしているからだ。
だれがどれだけ貯蓄をしているかを、部門ごとの貯蓄投資バランスで見ると、家計の貯蓄は、これまでと比べれば低下している。
一般政府の赤字も縮小している(ただし、今回の不況による税収の急減により、今後政府の赤字は拡大する)。
非金融法人企業の貯蓄は急増していたが、今回の不況により急減する。
政府の赤字をさらに拡大することもできない。
海外部門は黒字であるが、これが黒字であるとは、日本の貯蓄を海外に引きつけることはできない。
すなわち、資本収支黒字の裏側としての経常収支赤字も縮小しなければならないということだ。
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